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『論語』と懐徳堂の講義

『論語』と懐徳堂の講義

『論語』は、日本の江戸時代においても最も多く読まれた中国の古典です。孔子の言行録である『論語』の中には、人生の指針となる名言名句があふれています。懐徳堂では、創立当時から、この『論語』を最重要のテキストとして講じていました。

『論語』に読む「人の道」

懐徳堂では、『論語』を読むことによって何を学んだのでしょうか。それは、「人の道」でした。初代学主(がくしゅ)の三宅石庵(みやけせきあん)は、次のように説いています。
 
「学」とは何を学ぶのか。「道」を学ぶのである。「道」とは何か。「人の道」である。人と生まれたからには「人の道」を学ばなければならない。「道」をさらに分けて言えば、「君臣・父子・夫婦・兄弟・朋友」の五者が各々のしかるべき道にかなうことである。つまり、君主は君主らしく、臣下は臣下らしく、父は父として、子は子として、各々の道をまっとうすることが「人の道」であり、それを実践できるから「人」と言われるのである。しかし、現実には、気質の偏りや耳目の欲望によって、人は自分の生まれつきの「道」を失うことがある。それを決して失わないのが「聖人」である。「学」とは、言い換えれば、この「聖人」の道を学ぶことである。
 
 このように、懐徳堂の教授たちは、受講生を前に「人の道」を学ぶことの重要性を力説しました。懐徳堂は、大阪町人の経済力を基盤として運営され、受講生のほとんどは町人(商人)でした。しかし、懐徳堂では、商業活動や営利事業について論ずるのではなく、それらを根底にあって支える「人の道」を説いたのです。
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